<石山寺>人々に敬愛されてきた石山寺の歴史と魅力 #巡る滋賀

<石山寺>人々に敬愛されてきた石山寺の歴史と魅力 #巡る滋賀

滋賀県の最大の魅力といえば、滋賀県の代名詞でもある日本最大の湖・琵琶湖。その他、国宝の「彦根城」やユネスコ世界文化遺産の「比叡山延暦寺」など一度は訪れたい観光スポットもまた有名です。

でも、それだけではありません。有名観光スポット以外に焦点を当て深掘りすると、まだまだ知られていない注目ポイントがたくさん! それを知らないなんてもったいない…!

この連載では、「現地の方がおすすめしたいスポットやお店、それをつくるヒトの魅力をていねいに取材し、お届けする滋賀の観光ガイド“巡る滋賀”」の情報を発信していきます。

滋賀県への旅のきっかけやガイドブックとなりますように…そんな思いを込めて滋賀県の新たな魅力をお伝えします。

「いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり……」源氏物語の冒頭の一節です。歴史を代表する物語が生まれたとされる、女流作家・紫式部ゆかりの石山寺。四季折々の花が咲き誇る花の寺としても知られています。そんな石山寺の座主である鷲尾 龍華(わしお りゅうげ)さんは、歴代初の女性座主。石山寺の歴史やその魅力についてお話を伺いました。

紫式部をはじめ、古来より多くの文学者が訪れたことから「文学の寺」とも呼ばれる石山寺。創建747年と伝えられる歴史ある霊山で、秋には2000本もの紅葉が境内を鮮やかに彩り、梅や桜、菖蒲に蓮などが咲く「花の寺」としても知られています。

「京都の清水寺と奈良の長谷寺、そしてこの石山寺は、『三観音』と呼ばれ、日本でも有数の観音霊場として広く信仰を集めてきました。平安時代の頃、『枕草子』でも清水寺の混み具合が書かれています。長谷寺のように遠いところには、皆遠出する時は覚悟していたそうですよ。比較的アクセスしやすかったのが石山寺で、観光信仰の聖地でもあります」と鷲尾さんは話します。

石山寺の始まりは奈良時代、東大寺の大仏建立の時です。大仏に塗布するために大量に必要だった金が不足なく掘り起こされるようにと、良弁僧正が石の上に観音様の像を置いて祈ったところ、陸奥国で黄金が見つかり大仏完成がなされます。なんとその像が岩から離れなかったため、そのまま岩の上に草庵を立てて寺院としたのが石山寺の始まりといわれています。

滋賀県の甲賀や高島などの山から切り出された木材は、この石山寺に一旦集められ、大和川を遡って、奈良の都まで運ばれていたそうです。天皇の勅願で建てられているため、国家的な催事も行われていたとのこと。

石山寺の場所には、『造東大寺司(ぞうとうだいじし)』という役職が置かれ、東大寺の造営に必要であった木材を集める役割だけでなく、その付属物の製作や写経事業も担当していました。そのため石山寺には何千点もの書物が集積されており、今でいう文化センターのような役割もあったそうです。文献を活用した写経や当時の研究ノートなども多く残されています。

《左》収蔵庫内の様子、《右》石山寺一切経函 (ともに写真所蔵:大本山 石山寺)
重要文化財:石山寺一切経第三十九函八号『瑜伽師地論巻第二十一』 (写真所蔵:大本山 石山寺)

石山寺の景観で、最も特徴的なのはその大きな岩。硅灰石は、石灰岩に花崗岩が接触したことによる熱作用で変質したものです。元々は白く、通常は大理石となるものが、石山寺のように雄大な珪灰石となるのは大変珍しいこと。それ故に神々しく、古来より神聖な場所とされてきたのでしょう。

高野山など厳しい修行をする寺では、女性が入山できない場所もありました。しかし石山寺は昔から広く開かれており、当時から女性が積極的にお参りできる寺だったといいます。

「平安の貴族にとってもお参りしやすい寺で、『石山詣』として流行りました。参籠といって、神社や仏堂などへ参って、一定の期間昼も夜もそこにお籠もりするんですね。女流文学日記にもよく残されています。藤原道綱母による『蜻蛉日記』にも石山詣に行ったという記述が残されています」

重要文化財:『石山寺縁起絵巻』巻三第一段 (写真所蔵:大本山 石山寺)

「ある時自暴自棄になって、朝方に京都を飛び出て徒歩で向かい、逢坂の関を超えて、石山寺に夕方に着いたと。今の時代で考えるとありえない距離ですが、そのくらい気軽に来られる場所だったことがわかります。瀬田川に沿って、水の風景を楽しみながら訪れることができることが、石山寺の大きな魅力だったのかもしれませんね」

続いて、鷲尾さんから紫式部のお話が語られます。

「一番有名なのが紫式部のストーリーでしょうか。1004年、紫式部は当時仕えていた中宮の彰子に“新しい物語が読みたい”と言われましたが思い浮かばず、石山寺に参籠して観音様に祈ったという話が残っています。7日間石山寺に滞在していましたが、それは一年で一番月が綺麗な中秋の頃。夜に外を見ると、出ていた月が琵琶湖に映っている姿を見て、源氏物語の一節を思いついたと言われています」

誰もが一度は耳にしたことのある作品であり、2024年の大河ドラマの影響でますます注目されている『源氏物語』。このように作品が生まれたのだと知ると、今までとはまた違った趣を感じられそうですね。

ディープな滋賀の魅力に出会える! 人気連載「巡る滋賀×キレイノート」の他記事は#巡る滋賀からご覧いただけます!

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