北陸新幹線延伸、今こそ福井旅へ。若狭湾を望む絶景美食宿「若狭佳日」
LIFESTYLE

2024.07.25

北陸新幹線延伸、今こそ福井旅へ。若狭湾を望む絶景美食宿「若狭佳日」

今年3月、北陸新幹線が敦賀駅まで延伸したことで以前よりもぐっとアクセスが良くなった福井県。大本山永平寺、恐竜博物館、あわら温泉、東尋坊など観光名所は数多くあるけれど、今回は若狭小浜(おばま)エリアを訪問しました。

日本海の玄関口として栄えた御食国・若狭小浜

東京駅から最速3時間8分で敦賀駅に到着。そこからローカル線で1時間ほど揺られて小浜駅へ向かいます。小浜と書いてオバマと読む。オバマ前大統領と名前が同じことから、就任当時や訪日時には大きく話題になったことも。

北から敦賀市、美浜町、若狭町、小浜市、おおい町、高浜町の6市町で構成される福井県の南西部・嶺南地方と呼ばれるエリア、いわゆる“若狭路”は、若狭湾に面し、田園や里山を擁していることから、食、産業、文化、特産物など6市町の個性を楽しめます。車窓から覗くのどかな風景に心癒されます。

日本海の玄関口として栄えた小浜市は、皇室や朝廷に海の幸を献上する「御食国(みけつくに)」と呼ばれ、都の食文化の発展に貢献してきました。国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、小浜西組を中心に町並み景観が保護されています。

里山十帖代表がディレクション。老舗旅館をリノベして再生

若狭湾をイメージした「小浜ブルー」をテーマカラーとして暖簾に採用

日本海側では珍しいリアス式海岸の若狭湾。穏やかな内海と山々に囲まれた自然豊かなエリアに、昨年8月に開業した「若狭佳日」に宿泊しました。

夏場は海水浴場としてプライベートビーチ感覚で楽しめる

若狭小浜の小さな漁村として知られる阿納(あの)で、かつてこの地域のシンボルだった老舗旅館をフルリノベーションして、本館、離れ、別館、蔵、外湯で構成したホテルとして再生。代表の御子柴北斗さんは、この地の美しさに惚れ込んで拠点を構えようと決意したという。地域活性化を図り、未来へつなぎたいという集落の人々の想いを受け、リノベーションプロジェクトとして新たにスタート。さらに「里山十帖」などを手掛ける(株)自遊人代表・岩佐十良さんがディレクションを担当したことでも話題に。

コンセプトは「御食国・若狭で 佳き日と出会う」。

若狭湾にふわりと包み込まれるような景色が広がるロケーションで、自然と文化がゆるやかに溶け合うような、静かな非日常と至福の味わいを堪能。ここでの滞在が良い日になるように、という願いを込めて名付けられたそう。

若狭湾と一体化するインフィニティバスを設る絶景スイート

趣の異なる三つの棟と13室の客室からなります。伝統的な日本家屋をリノベーションした[本館]、半露天風呂を設えたモダンなデザインが印象的な[離れ]、ドッグフレンドリールームがありファミリーステイにおすすめの[別館]など、人数や目的に合わせて選べるのがポイント。

今回宿泊したのは301号室の「【離れ】絶景スイート/オーシャンビュー/インフィニティバス付き」。

客室に一歩足を踏み入れると、ガラス一面に広がるグリーンがかった若狭湾。季節や時間帯、風向きや雲の流れによって、刻一刻と表情を変える海と空の情景に心を動かされます。

海と反対側には書斎らしきスペースも。樹齢130年もの老松や阿納集落の瓦屋根の眺望を愉しめます。

リビングと壁を挟んで並ぶ、インフィニティなバスルームはこの部屋のアイコン。水面に映し出される空と海のリフレクションが一枚のアートのよう。海の蒼が浮き出るように見える瞬間も。

湯に体を浸して遠くの水平線に目をやると、自分自身が海と一体化したような、ある種のマインドフルネスさえ感じられる、光と影を纏った幻想的な空間。

歯ブラシ、コットン、ボディタオル、スキンケアセットの入った竹籠バッグを持って大浴場へ

アメニティは環境保護の観点から海洋プラスチックの課題を身近に受け止め、できる限りプラ使用の削減に取り組んでいるという。

読書とアルコールを楽しむ宿泊者限定ラウンジ

蔵を改装した宿泊者専用ラウンジでは、チェックインから22:00まで、アルコールを含むフリードリンクが楽しめます。

福井県に纏わる書籍が並び、ライブラリーとしての側面も。メゾネットタイプの造りで隠れ家のよう。ただただ寛いだり、読書に没頭したり、思い思いの時間を過ごせます。

鯖街道を旅するように食す、ふぐ三昧コース

小浜を中心とした若狭地方は、奈良や京都から最も近い日本海の湊町。奈良時代、朝廷に海産物や塩など豊富な食材を献上することを許された特別な地域であったことから「御食国」と呼ばれていました。

古より若狭地方の人々は都にいかに美味しく魚を届けるか工夫を重ね、一汐や発酵の技が発達したという。都の人々にとっては大変なごちそうで、今でもハレの日には欠かすことのできない鯖寿司など、京都の食文化の礎となりました。

若狭佳日の本館1階ダイニング「膳(かしわで)」では、目の前の生け簀で養殖されたという「若狭ふぐ」を中心に、若狭の食文化とストーリーを織り込んだコースを提供。季節に応じて若狭くじ(甘鯛)のコースも。 日本最北端の養殖地である若狭湾で育ったトラフグは、身がしっかり引き締まり、旨味が凝縮された漁師こだわりの逸品です。

テーマは「ふく、来たる」。

若狭ふぐを主役に、福井・滋賀・京都の3県を結ぶ「鯖街道」に準えた料理や、小浜から湖西、京都の酒蔵から厳選した地酒を楽しめる利き酒も。全て大吟醸でありながら、その土地の水の違いを感じられる興味深いラインナップ。

「御食国」として都の食文化を支えた小浜を中心とした新鮮な食材を一皿一皿丁寧に仕上げた心づくりの料理を堪能できます。

[ふく、来たる]

前菜:ふぐあら西京焼、ふぐなます、ふぐの煮こごり、鯖のなれずし
椀物:若狭ふぐ、熊川葛、白味噌
造り:若狭ふぐのてっさ
凌ぎ:佳日の鯖寿司
油物:ふぐ、白子
鍋:てっちり、てっさと季節の野菜のしゃぶしゃぶ
越前そば:ふぐの出汁とともに
雑炊:松永のコシヒカリ、卵、香の物
水菓子:季節のジェラート

小浜ブルーを独り占め。海と山に抱かれた至高のうちとみ

若狭湾の海と山が一体となって見える景色がアイコニックな小さな外湯「内外海(うちとみ)」。

気性の荒い日本海の中で唯一荒波の立たない穏やかな若狭湾だからこそ見られる、特別な景観かもしれない。早朝には海から朝日が昇る瞬間を独り占めできるかも。

地産地消の食材と郷土料理を堪能できるこだわりの朝食

変わりやすいお天気の北陸地方で、昨夜とは打って変わって晴れ間が覗き、青空が広がる朝。波音を聴きながら目の前のビーチを散歩してみるのはどうだろう。これからの季節は裸足になってアーシングしてみるのも良さそう。

若狭湾を一望するダイニングでいただく朝食は格別。静かで穏やかな朝のひととき。

手掛けたのは京都を中心に活躍する若手建築家の魚谷繁礼さん。床、天井、テーブルに至るまで上質な国産木材を使用し、温かみのある空間に。

朝から2種の焼き魚が並び、この地に伝わる郷土料理を贅沢にいただきます。大本山永平寺の精進料理の影響か、豆腐とりわけ厚揚げの消費量は日本一を誇る福井県。味噌、豆腐、米など素材の味を大切に味わえる滋味深い料理が身も心も満たしてくれるよう。

[若狭佳日の朝]

越のルビーの贅沢トマトジュース
さば醤油干し、若狭がれいー汐
手づくりお惣菜 盛り合わせ
小浜厚揚げの焼浸し、ひじきの煮物、角野さんのへしこ炙り、辛子明太子、特製出汁巻き、季節野菜のお浸し
小浜の名水の汲み上げ豆腐
小浜のグリーンサラダ
松永のコシヒカリと小浜わかめの味噌汁
ヨーグルト

福井県有形文化財を再生したカフェ・コミュニティスペース

チェックアウト後に列車の時間まで余裕があったので、「護松園」に立ち寄ってみることに。江戸時代、現在の福井県小浜市を拠点に活躍した北前船の商人「古河屋」の五代目によって建てられた迎賓館が、カフェ・コミュニティスペース「GOSHOEN」として2021年に再生。小浜の藩主も景色を楽しんだという庭を眺めながらくつろぎのひと時を。

終わりに

伝統と風情ある町並みを身近に触れながら、たおやかな若狭湾の海岸を散策し、新鮮な海の幸とこの地に伝わる郷土料理を味わい尽くすことで、ゆるやかに流れる“小浜時間”を全身で感じる。

若狭の自然、食、人が重なり合い、紡ぐー。

若狭佳日での滞在がある種の記念日のように、きっとここを訪れたすべての人にとって、特別な「佳き日」になることでしょう。

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