加賀文化に浸りつつ
美人の湯、旬の蟹を満喫。
1624年の創業以来、多くの文化人を迎えてきた老舗旅館「白銀屋(しろがねや)」の歴史を受け継ぎつつ、新しい感性を取り入れた温泉旅館、界 加賀。
加賀友禅や加賀水引をはじめとする伝統工芸を散りばめた客室や、美食家・北大路魯山人の思想が生きる料理など、加賀の魅力を満喫できます。
約1300年前から、共同浴場を中心とした温泉場として栄えた山代温泉。界 加賀は山代温泉の中心地にあります。最寄りの加賀温泉駅からは、車で10分ほど。
街中を歩くだけで、江戸時代にタイムスリップしたかのような気分が味わえます。
紅殻格子(べんがらごうし)が美しい、界 加賀の玄関。
吊るされているのは昔、時刻を知らせるために叩かれたという「魚板」です。
金物を使用しない雪国独特の工法「枠の内」で建てられたこの建物は、国の登録有形文化財。
フロントホールでは、金沢の牡丹雪をイメージした加賀水引のオブジェが出迎えてくれます。
左右が大きなガラス張りで開放感のあるトラベルライブラリー。終日コーヒーや紅茶などを自由に飲みながらくつろぐことができます。
奥の書は、旅館「白銀屋(しろがねや)」を訪れた北大路魯山人が書き残していったものだそう。
トラベルライブラリーの隣りにある茶庭の奥には、江戸時代に建てられた茶室「思惟庵」があります。
こちらでは一人で静かに加賀棒茶を楽しめる「独服体験」ができます。
最初だけスタッフの方が教えてくださり、あとは一人に。静かな器を眺めながら浅煎と深煎を飲み比べていると、日常から離れてリラックスできます。
そしてお部屋へ。
客室は和室ですが、全室ローベットとソファがあり、加賀友禅などの伝統工芸を随所に取り入れています。
今回滞在したのは、全48室中、18室ある温泉露天風呂付きの客室でした。
いつでも好きなときに温泉に入れるのは最高!私は飲み物をそばに置いて、夜2回、朝1回と入りました。
もちろん、大浴場もあります。
こちらのお湯は「美人の湯」とも言われるとろりとした泉質が特長。
内風呂の壁面には若手作家が四季をテーマにデザインした九谷焼のアートパネルが組み込んであります。
4つとも作風やモチーフが違って、眺めるほどに奥深く、つい長湯をしてしまいそうなのでご注意を。
庭の松を眺めながら入れる露天風呂の天井には、山々と満月を表現した金沢箔のアートが。
夜には水面に映る月でお月見も楽しめます。
ちなみに毎日16:30から大浴場前のギャラリーで行われる「温泉いろは」というミニ講座は、加賀温泉についての知識や効果的な入浴法について教えてもらえるのでおすすめ。予約は不要です。
お風呂を楽しんだ後は、夕食。今の季節は日本海の冬の名物、蟹が味わえます。
今回私がいただいたのは「ひとり蟹会席」。蒸し、焼き、刺身などさまざまな調理法で、1人あたり1.5杯の蟹をいただけるという贅沢なコースです。
中でも名物は「活蟹のしめ縄蒸し」。
生きたままの蟹に塩水に浸した縄を巻いて蒸すことにより、旨味が凝縮され、中の身がふっくらと仕上がるそう。
煎り酒や割りいしる(「いしる」とは、能登地方に伝わる魚醤)、アボカドマヨネーズなど、6種類のつけダレと一緒に味わえます。
「器は料理の着物」という北大路魯山人の言葉に習い、料理と器の調和をテーマにしているのがこちらのお食事処の特長の一つ。
そのほかのメニューは以下。こだわりのある九谷焼きの器がお料理を引き立てます。
- ・香箱蟹
- ・お造り取り合わせ
- ・蟹の甲羅焼き
- ・松葉蟹の鍋
- ・蟹雑炊
- ・合鹿椀(ごうろくわん)
- ・香の物
- ・金時芋のムース
夕食後はロビーで、ご当地楽の「加賀獅子舞」の鑑賞も。
両眼が鋭く左右に広がった「八方睨」と呼ばれる風貌の獅子舞はビジュアルだけでもすごい迫力!
舞いの躍動感も素晴らしく、惹きつけられます。ちなみにこの獅子舞の頭は5kgもあるそう。
翌朝は朝食前に「おはよさーん体操」をしました。
体を温めてほぐすようなストレッチを中心とした体操で、体を動かしているうちに頭もすっきり目覚めてきます。
そして朝食。温かいいしる鍋が出てきて、さらに体がポカポカに。魚介の旨味がたっぷりのやさしい味の鍋は、まさに朝ごはんにぴったりです。
ご当地のいろいろ味わえる全13種の献立がこちら。
- ・豆腐
- ・カラスガレイの西京焼き
- ・だし巻き玉子
- ・小松菜と油揚げのおひたし
- ・彩りなます
- ・信田巻き
- ・椎茸真薯
- ・利休牛蒡
- ・白米
- ・昆布梅
- ・香の物
- ・味噌汁
- ・ヨーグルト
少しずつたくさんのお料理を味わえて、満足感たっぷり!
チェックアウト前に、金継ぎ体験をさせてもらいました。
「金継ぎ」とは、割れてしまった器を金で継いで修復する技法のこと。
今まで200を超える館内の器の修復をしてきたスタッフさんたちが金継ぎの技術を丁寧に教えてくれます。
作れるのは、ピアス・イヤリング、髪飾り、箸置きの3種類。私は箸置きを選びました。 材料に使用するのは、作家さんから提供してもらったという器としては販売できない九谷焼の破片。
こちらを箸置きの土台に貼り付けながら金継ぎをしていきます。
出来上がった箸置きはこちらです。
伝統文化に触れながら、北陸の美味しい食材や美人の湯を楽しめる界 加賀。
リラックスしたいときはもちろん、ちょっと日常から離れてリフレッシュしたいときに、またぜひ訪れたい宿です。
石川県加賀市山代温泉18-47
東京在住のビューティエディター。趣味・特技は、牡蠣を食べること(WEBサイト「カキガール」主宰)、相撲観戦、サーフィン、旅行。一番好きな旅先はハワイです。将来は牡蠣とビールだけで暮らしてみたい! プロの視点で、最新コスメや美容スポットなどを、「使ってみた」「受けてみた」という生の声とともにお届けします!
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