<巡る滋賀×キレイノート>滋賀の新生和菓子ブランドNANASAN

<巡る滋賀×キレイノート>滋賀の新生和菓子ブランドNANASAN

滋賀県の最大の魅力といえば、滋賀県の代名詞でもある日本最大の湖・琵琶湖。その他、国宝の「彦根城」やユネスコ世界文化遺産の「比叡山延暦寺」など一度は訪れたい観光スポットもまた有名です。

でも、それだけではありません。有名観光スポット以外に焦点を当て深掘りすると、まだまだ知られていない注目ポイントがたくさん! それを知らないなんてもったいない…!

この連載では、「現地の方がおすすめしたいスポットやお店、それをつくるヒトの魅力をていねいに取材し、お届けする滋賀の観光ガイド“巡る滋賀”」の情報を発信していきます。

滋賀県への旅のきっかけやガイドブックとなりますように…そんな思いを込めて滋賀県の新たな魅力をお伝えします。

NANASAN

過去のものを継続し、発展させながら将来を開拓していくこと―。「継往開来(けいおうかいらい)」の精神で新しい食体験・新しい和菓子を創出しているのが、滋賀県高島市の「とも栄菓舗」から2017年に誕生した「NANASAN(ナナサン)」。

2021年には代表作『MIO』がベストお取り寄せ大賞 総合大賞を受賞。伝統技法を取り入れながら、高島・安曇川そして和菓子の魅力を開拓する新ブランドについて、西沢勝仁さん・有莉さんにお話を伺いました。

#NANASAN

「和菓子屋は地域の慣習や風土と密接に絡んでいるのでどこにでもあります。とりあえずでも店に入ってもらえれば、100人にひとりくらいは“和菓子沼”にハマって頂けるんじゃないかと思っています。興味を持って和菓子に接してもらえたら嬉しいな、と。そしてそれは『とも栄』でなくてもいいんです。おこがましいですが、NANASANでそのきっかけをつくることができたら嬉しいと思っています」

「革新7:伝統3」を指標に掲げ、現代の感覚を取り込んだ新しい食体験を追求し、従来の感覚にも寄り添える和菓子を創出している「NANASAN」。勝仁さんは「とも栄菓舗」3代目の長男であり4代目若旦那として新ブランドを立ち上げ、奥様の有莉さんと二人三脚で魅力創出に挑戦しています。

ブランドの軸でありフラッグシップともいえる琥珀糖『MIO』。特徴的なのが美しいその見た目です。ブランド名を体現した、底面が七角形(7)、側面をたくさんの三角形(3)で構成する多面体。新ブランド立ち上げのイメージにぴったりの日の出のパッケージも、びわ湖の朝焼けを7:3のグラデーションで表現しています。MIOの開発には本当に長い歳月をかけて取り組んだそうです。

「初めは真っ暗闇でした。ものすごく多くの時間や労力をかけ結果が出るか不安にもなったのですが、最初の展示会でのお客様の反応がすごく良く、以降ちょっとずつ広がっていってくれたという感じです」

もちろん食感や味にも深いこだわりが。琥珀糖ならではのシャリっとした食感と中にあるアドベリー味のもちっとしたゼリーのコントラスト。これもこの造形だからこそだと有莉さんは強調します。

「多面体で表面積を増やすということが、食感にも大きく影響するんです。中の餡が入るスペースや、型から抜きやすいかどうかとか、デザイナーさんと力を合わせて数ミリ単位でこだわった結果がこの形と味わいなんです」

「作り始めてから2年、やると決めてからはトータルで3年近くずっと考えていました。でもその長い期間があって良かったと思っています。その後もいろんな商品開発をしましたが、時間をかけた分だけ想いは詰まりますし、お客さんに共感してもらえたり興味を持ってもらえたりするとより嬉しいことが分かり、良い体験になっています」

この『MIO』が具現化したことで、より一層NANASANのコンセプトや想いが飛躍してきたそうです。

また、『MIO』を一躍世に広めたお取り寄せ大賞受賞は、人との縁によって選んで頂いたものだったと勝仁さんは振り返ります。

「30〜40代くらいの若旦那世代が集まりチームになって、年に2回は東京の百貨店で催事を行っています。これをきっかけとしてスイーツジャーナリストの方にもNANASANを知って頂き、『MIO』を推薦してくださってノミネート、そこから受賞させて頂くこととなりました。数珠つなぎのように、皆さんのご縁から新しいご縁を繋いでくださったことで今があるという感じです」

東京での催事を現在でもしているのは、滋賀県の魅力を伝えたいという想いから。こうしてNANASANもまた、お客さんと滋賀県との縁を繋ぐ役割を担っていきます。
「滋賀県のお米や果物を東京に送って、その場で作った和菓子をお客さんにお出ししています。興味を持って滋賀にきてもらえれば、地域のほかのお商売屋さんや農家さんも嬉しいだろうなって。実際、ここでの出会いをきっかけに滋賀に来てくださった方もいらっしゃったので、こういう発信はこれからも続けていきたいなと思っています」

純然たる和菓子は引き続き「とも栄」、新たなチャレンジを追求する立ち位置として「NANASAN」があります。

「お菓子屋の子供でなかったら、自分自身も和菓子を口にすることはほとんどなかったはずです。このまま何もしなければ若い世代が和菓子を食べる機会は増えないだろうと思い、そのきっかけをつくるためNANASANができました。手に取ってみたい、誰かにあげてみたいと思ってもらえるようなパッケージもそうで、今までにない見た目や食べたことのない味わいを目指しつつ、地元のアドベリーを掛け合わせることで地域にも貢献できればという考えで作っています」

NANASANのラインナップのひとつである『SOU』は、おおよそ7:3の割合で2層になった餡ペーストにカステラのラスクをつけて食べるお菓子。「新しいあんこの食べ方を追求したくて作りました」と西沢さん。レアチーズのコクをアドベリーの酸味が引き締める【アドベリー&レアチーズ】の餡ペーストは、濃厚ながらもさっぱりとした味わい。くちどけの良いカステラのラスクの食感も特徴的で見逃せません。

ほかに【黒胡麻&レアチーズ】【抹茶&レアチーズ】の餡ペーストもあり、現在は全3種のバリエーションで好評発売中です。

そしてもうひとつ、白あんを粉末にしたものをクッキー生地として使う『HAKU』。こちらはアドベリーの爽やかな酸味、そして食感の違いも楽しめる、後味の軽い和のクッキーです。サクサク生地の内側にほろっと崩れるショコラ、さらに中心にはやわらかいアドベリーのチョコが入った3層構造になっています。

「徐々に知ってもらえるようにはなりましたが、それでも“やっとスタートラインに立てた”という感覚です。これからも、チャレンジングなものというか、見た目も食べた感じも違う“NANASANらしさ”を体現したお菓子を作りたいと考えています」

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