2022.05.08
香川が誇る伝統的ものづくりに触れる和三盆干菓子・練りきり体験「豆花」
豆花
行楽シーズン到来! 次の旅先に、魅力あふれる香川の高松市はいかがですか?
香川県の代表的なおみやげといえば「和三盆干菓子」。四国東部でのみ昔ながらの製法で生産されている高級砂糖“和三盆糖”を使用した、見た目にも可愛らしく、ほろりと口どけが優しい和菓子です。
そんな歴史ある和三盆干菓子と、練りきり作りの体験ができる教室『豆花』をご紹介。特別な経験はきっと忘れられないものになるはず。
四国唯一の職人が手掛ける菓子木型の魅力
四国の玄関口、香川県は“うどん県”だけでなく“アート県”としても有名。
閑静な住宅街にある一軒家を改装して作られた教室は、地元香川県出身の美術家カミイケタクヤさんが手掛けた伝統と現代アートが融合した非日常的な空間です。
「豆花」という名前は、花をモチーフにした木型も多く、小さくてかわいらしい和三盆干菓子のイメージが由来。
干菓子を作る際に欠かせない「菓子木型」は江戸時代から伝わり、樹齢100年級の山桜を乾燥させ、花鳥風月をはじめとした四季折々の図柄が、何種類ものノミ、彫刻刀で、左右の凹凸を逆に丹念に彫り込まれています。
この木型を製作する職人は全国でもほんの数人。四国では唯一の職人である市原吉博さんは、黄綬褒章を授与され『現代の名工』にも選ばれた菓子木型職人です。木型の伝統を守りつつ新しい型の創造にも取り組んでいます。
豆花では市原さんの伝統工芸品を実際に手に取り使うことができ大変貴重な経験ができるのです。
とびきりの笑顔で出迎えてくださったのは市原さんの娘さんであり、豆花のオーナーの上原あゆみさん。コロナ前は海外にも自ら赴き、英語でセミナーを開催していたそう。現在も多岐に渡り精力的に活動されています。
巧緻を極めた「食べる伝統工芸品」
早速、今回は和三盆干菓子・練りきりに挑戦!(和三盆干菓子・練りきり作り<約1時間半>税込2,500円/人)
まず、和三盆干菓子づくり。一度の体験で、12~13個ほど作ることができます。100種類以上ある木型の中から、四季のもの・体験者の年代に合わせた上原さんのオススメから、好きな木型を選びます。
デザインは、伝統的なモチーフからモダンなものまで様々。いつ来ても違った木型で新しい体験ができるのが豆花ならではの魅力です。
一見難しそうに見えますが、作り方は驚くほどシンプル。
1.ボウルに入れた和三盆糖に軽く霧吹きで水分を含ませます。カラーも選べるので数人でシェアするのも華やかでオススメ。
材料にもこだわりが。使用している “三谷製糖”の和三盆糖は雑味のないスッキリとした甘さが特徴。食紅も少量でふわっと広がり優しい色がつくのだとか。
2.手のひら全体を使って混ぜ、ぎゅっと握ってコトンと落ちるくらいの固さになるまで、全体に水分をいきわたらせます。素早くやるのがポイント!
3.網で裏ごし。こうすることで、ふんわりなめらかな口当たりになります。
4.上板と下板を重ねた木型に砂糖を詰めます。和三盆糖は乾燥しやすいので手際よく作業するのがコツ。湿度の関係で、季節や天候にも左右される繊細な一面も。
5.ヘラで余分な砂糖をそぎ落し、コンコンと上板を軽くヘラで叩き、下板をひっくり返すと…精巧に描かれた干菓子が出現! …か、かわいい!
木型の素晴らしさは、なんと言っても「和三盆を型に詰めて抜くという非常にシンプルな作業で、美しく繊細な干菓子ができる」ということ。しかも“誰が作っても全く同じものが作れるのが型の魅力”と上原さん。
『食べる工芸品』とも言われているその様は、あまりにも繊細で手に取るのもためらってしまうほど…!
練り切りは生地で白餡を包みながら成型します。美しいぼかしができるのは、白餡は可能な限り白いものを使用しているため。
木型を使えば巧緻を極めた作品が簡単に完成。
木型を使わず成型する桜は、少々不格好になりましたが、それも醍醐味。思いっきりの良い私の手際を見て「人柄がでますね~」なんて、皆で楽しく笑いながら作りました。
体験後は、お抹茶と一緒にいただきます。
できたての干菓子は、口の中に入れた途端にほろりと崩れ、すっと溶けて優しい甘さがじんわり広がります。こんなにも柔らかい和三盆干菓子が食べられるのは体験した人だけの特権ですね。
残りは箱詰めにしてお持ち帰りも可能。至福のひとときでした。
小さく愛おしい芸術と大きな笑顔をお土産に
お客様のほとんどが県外から、または地元の方が県外のお友達と一緒に訪れることが多く、「何年も前から来たいと思っていてやっと来ることができた!」という方もいるのだとか。
上原さんは”単にお菓子を作るだけでなく、お客様にとっては特別な経験になるのだ”といつも心に留めているそう。
香川の特産である和三盆や伝統工芸品である菓子木型について知ってほしいという想いもある一方、体験後に豆花を出たお客様が「楽しかったね~」と言いながら帰っていく瞬間が一番うれしいと上原さん。
日本の誇る和菓子文化の裏方。決して表に出ない存在の菓子木型ですが、和菓子づくりにはなくてはならないもの。文化の伝承についても考えるきっかけとなりました。
海と山、自然豊かで親切な方々が迎えてくれた香川県。心あたたまるひとときを過ごしに、ぜひ一度訪れてみては。
■豆花 体験詳細
和三盆、練りきり 各1,500円
和三盆&練りきり 2,500円
《15歳以下》
和三盆、練りきり 各1,000円
和三盆&練りきり 2,000円
※現在、体験は完全貸し切り制。詳細はホームページにてご確認ください。
ドイツ在住の元CA。システムエンジニアを経て客室乗務員となり、退職後2023年より家族とドイツに住む。学生時代に台湾留学でマスターした中国語と英語に加え、現在はドイツ語の資格取得に挑戦中。異文化交流と新しい体験を求めて、世界中を旅するグルメ探究者。旅先で味わった料理を自宅で再現するのが趣味。ドイツを中心にヨーロッパでの暮らしと旅情報をお届けしていきます。
Instagram:@wakana_log/@wakana_log_germany
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