高瀬川のほとりに佇む築90年の京町家で味わう医食同源の創作中華 一之船入
FOOD

2022.03.23

高瀬川のほとりに佇む築90年の京町家で味わう医食同源の創作中華 一之船入

創作中華 一之船入(イチノフナイリ)

森鴎外の短編小説「高瀬舟」の舞台としても有名な、京都・木屋町の史蹟・高瀬川。京都市内の東側を流れる有名な鴨川のすぐ西側を並行するように流れる南北の川で、繁華街の貴重な水辺空間として、京都の代表的な景観を形成しています。

その川のほとりに佇む築90年の町家(=町屋)の面影を残した「創作中華 一之船入(イチノフナイリ)」。京都市役所前駅近くに位置し、店名は一之船入と呼ばれる船止めの名に由来しています。

アジアトップシェフ10のオーナーシェフが京風創作中華を世界へ

今でこそ高瀬川には町家を活用したホテルやカフェが多く並びますが、1997年の当時はまだ町家で中華を提供する店は珍しく、京都における創作中華の先駆者的にオープン。その後姉妹店として「魏飯夷堂」を関西に3店舗、コロナ禍で自宅にいながらにしてお店の逸品を味わえるようにとオンラインショップを開業しました。

全店共通して、食べ物で病気を予防する「医食同源」の思想をとり入れ、無農薬の京野菜を使った健康志向の中華、美味しくて身体によい料理作りに取り組んでいます。

オーナーシェフの魏禧之さんは、生まれ故郷の横浜中華街をはじめ、全国の有名中華店で修行を積み、中国の最高級調理師の資格を取得。「中国料理アジアトップシェフ10」に殿堂入りするなど、その活躍は日本にとどまらず、京都国際観光大使としても、食を通じて京都の魅力を世界に発信し続けています。

高瀬川の桜を望む和の個室

ベンガラ色の壁が京都らしく、どこか懐かしさを憶える木造2階建ての一軒家。かつてお茶屋さんだった町家を改修したという外観は風情が溢れています。

暖簾をくぐり、玄関で靴を脱ぎ、2階へ上がるスタイル。コロナ禍に相応しく全室和室・個室のため、他のゲストとの接触はなく、プライベートが保たれる空間(1階部分は掘り炬燵の部屋と個室1部屋)。

廊下に沿って並ぶ個室は「町家」と名付けられ、なるほど町家の絵が描かれた襖を開けると、畳作りの和室に瀟洒なテーブル。窓から望める高瀬川と船着場の見え方、あるいは足の悪いゲストを考慮してか、ローチェアを配しています。胡弓の音色が心地よく流れます。

京のエッセンスを感じるやさしい創作中華

今回は定番の魏コースをいただきました。

1-2月メニュー「魏コース」

前菜5種の盛り合わせ

牛フィレ肉と九条ねぎの中国味噌炒めクレープ包み

フカヒレとあおさのりのスープ

大海老の春巻き

広東風鮮魚と季節野菜の炒め

蓮根とあさりの炒飯

デザート

ジャコとピーナツ(ジャコピー)の先付をつまみながら、中華料理といえば、一之船入特選甕出し紹興酒「古越龍山」を。

前菜5種の盛り合わせ

まずは前菜の盛り合わせ。1皿に5種が彩り美しく並びます。ミニトマトのコンポート、自家製チャーシュー、焼鯖、湯葉と焼豚の上に豚足の煮凝りは、シェフのセンスが光るメニューの数々。蒸し鶏の葱ソース、くらげの酢の物は常連客からのリクエストが多く、通年でいただけるそう。しっとりとした蒸し鶏の食感は忘れられない逸品です。

牛フィレ肉と九条ねぎの中国味噌炒めクレープ包み

ほうれん草を練り込んだグリーンの鮮やかなクレープ生地に、牛フィレ肉を手で巻いて食べる北京ダックスタイル。あるいは葉物野菜に牛肉を巻くとたちまちバーベキュー感覚に、2度美味しく楽しめます。

大海老の春巻き

続いて、大海老、百合根、大葉が詰まった新感覚の春巻き。周りはカシューナッツでコーティングされていて、ボコボコした食感が楽しい一品。チリクリームチーズソースと合わせてエスニック風に。

広東風鮮魚と季節野菜の炒め

メインは鯛に、黄ニラ、カブラの野菜炒め。生姜のガリを添えて。中華特有のこってり、喉が渇く要素は一切なく、どちらかといえばあっさり。老若男女が食べられる、体にやさしい味わい。

蓮根とあさりの炒飯
杏仁豆腐と小豆バニラアイスのせ

昆布出汁を取り入れたこだわりのフカヒレ

フカヒレとあおさのりのスープ

名物料理は、フカヒレの姿煮込み。中国料理では定番の白湯スープは、通常鶏ガラや豚ガラ、香味野菜や金華ハムなどを、強い火力で長時間煮込み、白濁させて仕上げるところ、魏シェフはさらに昆布を加えて、和の要素を取り入れています。「創作の中に、ホンモノの味を感じて欲しい」「自身の料理をもっと身近に味わって欲しい」というシェフの想いが詰まった逸品です。

甘、辛、酸、そして旨味をバランスよく味わえる新感覚の創作中華に、心もお腹も満たされるひと時でした。ランチコースは4,400円~、ディナーコースは6,600円~とリーズナブルなのも魅力。甘、辛、酸、そして旨味をバランスよく味わえる新感覚の創作中華に、心もお腹も満たされるひと時でした。

生産者の顔が見える、食材へのこだわり

美味しいだけではなく、安心安全で作り手の真心を感じられる野菜を使いたい、というのが一番のこだわりだという。契約農園の無農薬野菜、果物、肉や魚、その他厳選した食材を使用し、「生産者の顔が見えること」を心がけ、どこで穫れたのかわからない材料は一つもない、食品管理を徹底しています。

食す人の健康を考え、京都の歴史を盛り込みつつ、新たな中華料理を生み出し世界に発信していく、料理人の情熱と技を感じました。

寒空の下、帰り際ゲストの姿が見えなくなるまで、シェフとスタッフの方がお見送りしてくださった、おもてなしの心もまた印象的でした。

まもなく川沿いには満開の桜が咲き乱れる季節に。京の風情と四季を感じられる絶好の場所。次は台湾風マンゴーかき氷をいただける季節に再訪したいところ。

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