2021.11.10
開業2周年。日本の伝統美の継承と革新を誇るThe Okura Tokyoで美・食・住を満たすワンランク上の滞在
The Okura Tokyo(ジ・オークラ・トーキョー)
10月から緊急事態宣言が解除されて、少しずつ街に活気が戻ってきた様子。いきなり遠出することに躊躇いを感じる人も、まずは近場でスマートに。心に留めておいた外出欲、旅行欲を解放してみてはいかがでしょう。
今回は開業2周年を迎えた「The Okura Tokyo(ジ・オークラ・トーキョー)」を訪問。前身は日本を代表する“元祖御三家”の一つ「ホテルオークラ東京」。虎ノ門の閑静な高台に、当時としては最大規模とも言える550の客室を持つ一流ホテルとして、国内外の多くのゲストから広く愛され続けました。
2015年、老朽化などにより惜しまれつつも解体された本館は、装い新たに「ヘリテージウイング」と「オークラ プレステージタワー」のそれぞれに異なるコンセプトを持つ二棟構成で、国際都市・東京に相応しいハード面とソフト面をバランス良く備えています。今もなお再開発が進む虎ノ門エリアの新たなランドマークとして存在感を放っています。
意匠を継承することで完全再現されたオークラロビー
今回のオークラ建て替えに際し、「Save The Okura」というコミュニティの中で、日本のモダニズム建築の代表格とされた本館の保存を求める署名活動が6,000名以上集められたということからも伺えるように、この一大プロジェクトは世界中から注目を集めていました。
その象徴とも言える伝統の“オークラロビー”は、プレステージタワーの5階に見事に再現されました。足を踏み入れた瞬間、静けさと雅やかさ、奥ゆかしさに包まれて、自然と背筋が伸びる感じ。さりげなく文化と芸術の香りが漂い、たちまちオークラの世界に引き込まれます。
切子玉をモチーフに温もりを演出した“オークラ・ランターン”と呼ばれる照明、ロビーの天井に向かってリズムを刻む麻の葉文様の美術格子、四弁花文様の壁面装飾、梅の花芯とそれを取り囲む花弁に見立てた漆のテーブルと椅子…。
これらを手掛けたのは世界的建築家・谷口吉生氏。父・谷口吉郎のDNAを継承する形で、親子二代にわたってオークラブランドの意匠を担当しています。外見的にはほぼ変化を見せないものの、緻密な研究や調査をもとに修復と新規製作を組み合わせて、どことなく懐かしさを憶えるような印象に。
日本で初めて私立美術館として開放したという大倉集古館は、伊東忠太設計の国の登録有形文化財であり、建て替えを機に移築(セットバック)されるも重要文化財として今もなお大切にされ、宿泊者は無料で見学できます。
“オークラスクエア”と呼ばれる広場の中央にある1辺42mの六角形の大きな水鏡は、まさに東京の街を映す鏡のような存在。静かで穏やかな空気が流れ、都会の喧騒を忘れさせるよう。
ランドスケープ的な評価が高い庭園では、一年中四季を感じられる草花(今の季節はススキ)を愛でることができます。シンボルツリーの大銀杏や東郷平八郎お手植えのクスノキは、かつてのオークラの庭園からそのまま移植したとか。まさにここは都会のオアシス。
昔から馴染みのある人にも、初めて訪れた人にも、一瞬でオークラを体感させる演出がエントランスからロビーにかけて其処彼処に施されています。
ホテルの中のホテル、クラブラウンジで過ごす上質なひと時
全508室のうち、今回はプレステージタワーの上層階に配置されたクラブフロアの客室に滞在しました。
チェックインは37階のクラブラウンジにて行われます。眼下には虎ノ門エリアの高層ビル群と、右手には東京タワーを望む贅沢な空間です。ウェルカムドリンクにはエルダーフラワーカモミールのシロップを炭酸水で割った口当たり爽やかなドリンクをいただきました。
クラブラウンジでは、1日4回のフードプレゼンテーションがあり、終日ここでゆったりと過ごすことができます。ディナー前のライトリフレッシュメントとして、フルーツサンドやプティケーキ、イブニングカクテルのピンチョスといったフィンガーフードが並び、思わず目移りしてしまいます。
ドリンクも種類豊富で、日替わりのシャンパン(この日はLanson Black Lbel Brut)からオークラのハウスワイン、ウィスキー、コーヒーメーカー、ディルマの紅茶、搾りたてのフレッシュオレンジジュースまで。
さらにはインバウンドや出張者、日本への一時帰国者を考慮してか、「のむ天然おだし」なるドリップパックも常設されていて、ホッと安らぐひと時に。
高層階の景色を日常にするビューバスタイプのクラブルーム
クラブラウンジへのアクセスが便利な37階のビューバスタイプのクラブルーム。麻の葉模様が刻まれたカードキーで部屋に入ると、まず大きな窓の向こうに広がるパノラマビューに心躍ります。壁を挟んで右手にベッド、ソファ、サイドテーブル、デスク、左手にクローゼットとバスルームを配し、機能性を備えた開放感のある空間。
シックモダンな石板調のバスルームにはテレビが埋め込まれていて、優雅なバスタイムに。Miller Harrisのバスアメニティと、THREEのスキンケアがセットされ、心地よい香りに包まれます。
シンプルな見た目がらも杢目の上質さと機能美を兼ね備えるデスク。脇にはコンセント、USB、有線LAN、HDMIを接続できる収納式のパネルが手の届く範囲に設置されていて扱いやすい。Wi-Fi環境も快適で、仕事用途で申し分のない環境。
空調や照明、カーテンなどあらゆる操作はベッドサイドのタブレットでスマートに行えます。クラブルーム予約ならプレスサービスを滞在中3着まで利用できるのも出張者には嬉しいポイント。洗練されたしつらえに、散りばめられた和のおもてなしを感じられます。
夕暮れ時にはオレンジ色に染まり、ディナーから戻れば新宿の高層ビルに灯りが点されて煌めく夜景に変わり、翌朝にはスカッと澄んだ青空が広がる。時間の経過と共に変化する大都会の眺望に溶け込むように日常を送れるのも、このクラブルームならでは。
“食のオークラ”伝統のローストビーフディナー
The Okura Tokyoのレストランやバーにはそれぞれの店を象徴するシグネチャーメニューが存在します。代々継承されてきたものが多く、その味を求めて度々訪れる常連客も多いとか。
中でも、オールデイダイニング「Orchid(オーキッド)」では開業当初から大切に受け継がれる、都内ホテル有数のローストビーフが味わえます。
天井が高く、オープンキッチンが見える店内は、ダイナミックながらも上品で落ち着きがあります。開放的なテラス席や使い勝手の良い個室も備え、早朝から深夜、週末限定のブッフェに至るまで、あらゆるニーズに応えてくれます。
今回は“伝統のローストビーフディナー”をコース仕立てでいただきました。サーモン、コーンビーフ、生ハムを使用した彩り豊かな日替わりの前菜と、パンかライスを選べます。
適度なサシが入り、肉本来のうま味が味わえる国産牛をじっくり2-3時間かけて低温調理で火入れしているそう。柔らかさはもちろん、肉のほのかな甘さが口の中に広がります。和牛だと脂っぽく感じることが多いものの、こちらはサシが少なめで、脂までしっかり美味しくいただけます。グレービーソースは雑味のないクリアな味で、肉の旨みに奥行きを与えているよう。Okuraブランドの甲州ワインとの相性も抜群。
老舗バーが踏襲する至極のマティーニに酔いしれる
オールデイダイニングと合わせて是非立ち寄りたいのが、開業当時から世界中のファンに愛されてきたメインバー「Orchid Bar(オーキッドバー )」。
歴史を刻む調度品と、13mのロングカウンターが醸し出す重厚な雰囲気、磨き抜かれた一流のバーテンダーの技が、極上のひと時を演出します。バックバーには世界的にレアなアイテムを含め、200種を超える洋酒が豊富にラインナップ。
カクテルの王様とも言われるマティーニは、ここのシグネチャー。ノイリー・プラットとオレンジビターを配合したオリジナルビターをわずかに加え、ミキシンググラスでお酒と氷を合わせる際、水っぽくならないように氷の抵抗を最小限に抑えるステアの技術にもオークラならではのルールがあるとか。口当たりはドライでキリッとした印象。まさに王道かつ至極の一杯。
数ある日本のホテルバーの中でも、とりわけオーセンティックでクラシカル。老舗バーに相応しい風格と心地良さを求めて、今もなお毎晩多くのゲストが足を運ぶのだそう。
朝食は名物フレンチトーストをルームサービスで
「オークラといえば…!」として思い出されるもう一つに、世界一と名高い特製フレンチトーストがあります。長年愛されてきた伝統のメニューを自宅でも味わえるようにと、ホテルのホームページでレシピを公開し、外出自粛期間中はちょっとした話題に。
オールデイダイニングでも勿論オーダーできますが、折角だから客室を満喫すべく、朝食はルームサービスを選びました。朝の暖かな光に包まれて、都心の絶景を眺めながらいただく朝食は格別!
半面ずつ丸一日かけてじっくりアパレイユ(卵や牛乳を混ぜ合わせた液)に漬け込んだ食パンは、オーダーが入ってからフライパンで焼き色を付けた後、低温のオーブンで焼いて提供されるのだそう。甘い香りとふっくらしたフォルム、美しく色づいた黄金色が食欲をそそります。外はふんわり、中はしっとり、とろけるような食感。まるでスフレのよう。メープルシロップをたっぷりかけて、お好みでバターやジャムを添えていただきます。手間と時間がかかった納得の逸品です。
フレンチトーストのフルーツは味が移らないように別添えに、ドリンククーラーに入ったフレッシュジュースは水滴がグラスに付かないような工夫が施されています。そのきめ細かな心遣いもさすが。
バスローブを着たままコーヒーカップ片手に、映画「プリティ・ウーマン」のワンシーンのようなスペシャルな朝食体験がここにありました。一日のはじまりの最高に優雅で贅沢なひと時!
日本初のANNAYAKEスパで五行思想トリートメントを体験
東洋と西洋の美の融合としてフランスに誕生したスキンケアブランド「ANNAYAKE(アナヤケ)」を日本で初めて導入したのが、ここThe Okura Tokyoのスパ。竹、柚子、椿など日本の伝統的素材から抽出される効果を取り入れながら独自の製品を生み出しています。
スパのコンセプトは、古代から東洋に伝わる自然哲学「五行思想」。
万物を創り出す5つの自然のエレメンツになぞらえ、「木(Moku/リラックス)」「火 (Hi/ルミエール)」「土(Tsuchi/リチャージ)」「金(Kin/リボーン)」「水(Sui/リフレッシュ)」といったフェイシャルとボディの各5コースがあり、両方組み合わせた集中ケアも可能です。
カウンセリングをもとに、その日のコンディションや体質、悩みに合わせてメニューを提案してくれます。たとえば「Moku」はフランス式の手技を取り入れ、手のひらの面を使った優しくなでるようなタッチが特徴。「Kin」は眠りが浅い・頭痛がするなどの悩みを抱えている人向けに、背中周りを中心に解して自律神経のバランスを整えるのが特徴。
今回私が体験したのは、The Okura Tokyo限定の「Tsuchi」ボディ60分。疲労を解消して活力を与えるコースです。
予約の1時間前より、炭酸泉・ドライサウナ・ミストサウナ含む温浴施設を利用できます。施術前に身体を温めることで血行を促進し、トリートメント効果が高まるとされています。
全7室あるトリートメントルームは、高層階から都心を一望でき、五行それぞれのテーマをイメージしているとか。
まずはフットバスで足元から温めて揉みほぐします。ラベンダー、ティーツリー、ユーカリ、ペパーミントからその日の気分でアロマを選択します。
このコースではウォーターメロンのオイルを用いるのが特徴。西瓜のみずみずしい香りを感じながら、セラピストの手と腕を使った、深い筋肉に働きかけるオイルトリートメント。頭から足の先まで長めのストロークで、丁寧にじっくり心地よい圧をかけながら肩甲骨に沿ってほぐしていきます。仕上げには頭皮をほぐすヘッドタッチで心地良い刺激を与え、目の疲れにも働きかけて気分をすっきりと整えてくれます。
今年6月より、半日ステイが楽しめる「ウェルネス・スパ・パッケージ」が登場。施術後はそのまま客室で寛ぎながら、ルームサービスで届くプラン限定Wellnessランチを堪能できます。プールでひと泳ぎするも、ジムでリフレッシュするも良し。多忙な現代人に相応しい、ホテルスパならではの心身のトータルケアを味わえます。
天空のバーラウンジで愉しむ季節のアフタヌーンティーと幻のゲイシャコーヒー
プレステージタワー41階にあるバーラウンジ「Starlight(スターライト)」は、クラシカルなオーキッドバーとは対照的に、地上190mから東京の街をパノラマで楽しめるゴージャスな空間。スタンディングスペース、ラウンジ、シェフズテーブルと3つのゾーンに分かれていて、それぞれシーンに合わせて利用できます。
中でも近年国内ホテルでは欠かせないアフタヌーンティー。The Okura Tokyoでは開業2周年を記念して「Starlight Afternoon Tea ~Pâtissier’s Table~」を期間限定の特別価格で提供していました(10月末終了)。
9-10月の内容
- アペリティフ
- オリジナルモクテル(この日は巨峰)
- モン・ファヴォリ春夏秋冬をイメージして作られたデザート
春:苺とライチのムース アーモンドサブレとともに
夏:アロエのコンポートとマンゴーのプリン ココナッツの泡添え
秋:季節のフルーツ(この日は柿)
冬:国産グリーンレモンと自家製プラリネのプティガトー
- 一口サイズのアクセント:日替わりプティバーガー
- セイボリー:蟹のコロッケ
- 旬のアシェットデセール:徳島県産なると金時芋のクリーム 渋皮付き国産栗とざくろと巨峰のシャーベット添え
旬のフルーツを盛り込んだオリジナルモクテル、数々のスイーツ、セイボリーのフルラインナップと、さらには“幻のコーヒー”の異名を持つパナマ ゲイシャ種や、王様と例えられるジャマイカ ブルーマウンテンNo. 1など、プレミアムなコーヒーとの組み合わせも!
東京の街を一望する空間が、ホテルならではの優雅な午後のひと時を紡ぎます。
たくさんの物語が重なる唯一無二のホテル
半世紀以上にわたり、日本の伝統美を守りながら世界の賓客をもてなしてきた名門、ホテルオークラ東京。
開業以来大切にしている情緒、そこから生まれる重厚感や静寂はきっと、何ものにも代え難く、そのオークラの真髄は確実に継承されつつ、The Okura Tokyoに生まれ変わったことで更なる革新と進化を遂げているように思いました。
国際都市・東京の中心地にあり、人々がホテルに求めるものは益々多様化する時代で、名門ならではの品格、最高級の落ち着き、歴史が作り上げる雰囲気、この地に伝わる新旧カルチャーを思いの限り体感できます。
オークラとしては来年で60周年。数えきれないほど多くのゲストたちによって紡がれてきたであろう物語に思いを馳せながら、名門ホテルの魅力を再確認した滞在となりました。次の半世紀にもまた受け継がれることを願って。
17歳から読者モデルとして「Vivi」「JJ」「non-no」など多数女性誌に出演。6年にわたってMBSラジオパーソナリティを務める。大学卒業後、化粧品会社勤務を経て、フリーランスに転身し、ヨガインストラクターを務める傍ら、トラベルライターとして世界中を飛び回る。過去渡航した国は47カ国。特にタイに精通し、渡航回数は30回以上。ハワイ留学、LA在住経験有り。現在は拠点を湘南に移し、全国各地を巡りながら、東京と行き来してデュアルライフを送る。JSAワインエキスパート呼称資格取得。
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